2012年7月22日日曜日

236.型破りエジソン

今は無き現代教養文庫に「五人の大発明家」というのがあった。クラウザー著。Amazon に古書が出品されている。

5人というのは、ジェームス・ワット、ジョージ・スティーブンソン、トーマス・エジソン、無線電信のマルコーニ、ともうひとりであった。失念してしまった発明家はたぶんグラハム・ベルと思うがはっきりしない。

ワットがやかんのフタが持ち上がるのをみて、蒸気機関を思いついたというようなエピソードはこの本には載っていない。これは後世のでっちあげなのだろう。

この5人の中でエジソンがとびきりおもしろい。というのは、彼の人生そのものが劇的だからである。

彼は学校でへんな質問ばかりするので、先生を怒らせてしまい、トーマスの母親は彼を学校へ行かせず、自分で教育した。

かれは15歳で新聞を発行して、鉄道の客に売ることをはじめた。

貨車の中で化学の実験をしていて、火事を起こし、車掌になぐられて、一生耳が遠くなった。

駅長の子供が駅の構内で機関車にひかれそうになったのを、身を挺して救い、感謝した駅長にモールス信号を教えてもらい、電信技士になる。(耳が遠くなっても電信は聞き取れたらしい)

電信技士になって各地を渡り歩いたが、夜中に来る電信をいちいち起きて聞きとらなくてもよいように、紙に記録する機械を考案するなど型破りな技師であった。(電気信号を記録する考案は、のちの蓄音機や電話の送話器の発明に通ずる。)

そのころ、電信で株式の情報を受信し、表示する機械が発明され、ある町でエジソンは、その機械が動いて、株価がつぎつぎ表示されるのを見ていた。するとかれの目の前でその機械が故障した。しらせをうけて駆けつけた経営者は、部下の技師たちに、早く直すようにと叱咤激励した。

よくわからないが、その株価表示機が動かないと、株価の変動にあわせて、株を売買することができず、その機械に頼って大きな取引をしている者は大損するようなことになっているらしい。ところが、何人もの技師がとりかかったにもかかわらず、だれも直すことができなかった。経営者は自分が長年築き上げた財産が数時間のうちに雲散霧消してしまう現場を自分で目撃している事態に絶望して立ち尽くした。

エジソンは横から機械を見て、故障の原因がわかった。かれは経営者の方へ行き、自分はこの故障を直せると思う、と言った。「直してくれ!直してくれ!」
と経営者は叫んだ。
エジソンが機械をちょこちょこっと直すと、機械はまた正常に動き出した。生き返った思いの経営者は、エジソンを技師として高給で雇ってくれた。

エジソンは勤務の合間に電信の発明をなしとげた。発明を買う人が現れたが、自分の発明を売るのははじめてのエジソンは、その額の見当がつかなかったので、自分から額を言わず、
「あなたはこの発明をどれだけで買うつもりですか。」
とたずねた。買い手の提示した額は、エジソンの考えていたのよりも桁ちがいに高額だった。

エジソンは巨額の小切手を現金化することを知らず、雇い主に現金化してもらったが、それを銀行に預けることをしらず、自宅に持ち帰って、盗まれることを心配して夜も眠れなかった。

エピソードのつるべ撃ち。とくにエジソンが世に出る前がおもしろい。これ全部がワットのやかんのフタのように後世の人の作り話とはとても思えない。

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