2012年10月5日金曜日

255.回転式○○鉄砲

木の回転式6連発○○銃2012(試作) WOODEN SIX-SH00TER RU**ER *AND G*N(Prototype)

という動画がある。○○のところに適当な文字をいれて検索すると出てくる。

良く似たことを考える人がいる。

ほとんど無駄な機構のように(機構のための機構のように)思えるが。

銃身が60度回転して同じところでぴたりと止まるので、まるで動いていないかのように見えるのはなかなかすごい。しかし回転翼式護謨●●でもリヤフックの動きは、そのようになっているので、おそれることはない。


ゼネバ機構の画像はhttp://www.thehourlounge.com/index.php?module=Thread&action=viewEntire&threadid=47758 

から引用。(geneva mechanism をキーワードにして画像検索し、この画像のサイトにアクセスしたほうが早い。)

2012年10月4日木曜日

254.タイマーIC555

How to build "The Most Useless Machine" という記事がboingboingというサイトにあって、それを読むと、most useless machine はpicマイコンとサーボモーターでなく、タイマーIC555とただのDCモーターを使っているようだ(以前第232項で書いたのは英語が読めないための誤り)。レーザーカットしたアクリル板を含めたキットを30ドルで売っている。安いキットのように思える。

タイマーIC555ならプログラムは不要なので、手がだせるかもしれない。Youtubeの動画では、箱の中の「手」は箱の上のスイッチを切ったあと、モーターの逆転によって、同じスピードで、来た道を戻っていくように見える。モーターを逆転させるには、やはり電子的な仕掛けが必要だろう。

昔作った貯金箱(ミステリー・バンク。本ブログの227項で取り上げた)は、クランクによって、手を前後運動させていた。すなわちモーターは逆転せず、ある方向に回転するだけである。これは電子工作でなく、トランジスタもコンデンサも抵抗も使わない。

森博嗣の「創るセンス 工作の思考」(本ブログ第226項)の中で、読者に与えられた課題である「缶ジュース自動販売機の模型」のうち、モーターと電池を使ったものは、このミステリー・バンクの仕組みを使えば、できる。ワタシはそれを自分で考えたのでなく、知識として知っている。

タイマーIC555を使うとつぎのようなことができる。引き金を引いて、一瞬スイッチをONにし、すぐ放す、するとモーターが一定時間回転して輪護謨を1発だけ発射して止まるということができる。ただそれは最初に可変抵抗器を調節して、適当にタイミングを決めているだけで、実際に輪護謨が飛んだのを感知しているのでもなければ、リリーサーの位置を感知しているのでもないので何百発もうつとずれてくるだろう。だから別に555が関係しない回路をつくり、それに切り替え、手動で動かして、(おお、そうだ!)ずれを直してやらないといけない。起点を手動で合わせるわけだ。時計の時刻を合わせるように。

昔、衆議院選挙の開票速報の番組をNHKでしたとき、コンピュータを使って、「当選確実」を予想した。ところが、そのころのコンピュータは不安定で、放送中にダウンすることがよくあったそうである。その対策はコンピュータの画面とは別にアナウンサーを待機させておき、コンピュータが故障すると、そっちの画面に切り替えていたらしい。その間にコンピュータを調整し、回復したら、またコンピュータ画面に戻した。不完全な機械でも、運用によって、実用に供すことができる。飛行機の車輪がでないとき、手動で車輪が出せるようにしてあるようなものだろうか。

2012年10月2日火曜日

253.リーゼ・マイトナー

「リーゼ・マイトナー 嵐の時代を生き抜いた女性科学者」R.L.サイム著を以前に読んだ。もう一度図書館から借りてきて、オットー・ハーンが核分裂反応の発見でノーベル賞を独り占めし、(ひとりにしかあたえられなかったので彼のせいではないが)受賞演説で、リーゼ・マイトナーに言及しなかった部分を読もうとしたが、読めなかった。

カイザー・ウィルムヘルム研究所で、気さくなオットーハーンと共同研究をした、リーゼ・マイトナーの輝かしい日々の記載が延々と続き、ブログの材料をパクってやろうという、下卑た根性では、読めなかった。

とにもかくにも、オットー・ハーンはウランに中性子を当てる実験の結果をナチの手をのがれてスウェーデンに移住したリーゼ・マイトナーに手紙で送ってやったのである。その実験結果は、化学者としてのハーンの腕がなければ、そして、マイトナーにたいする友情がなかったら、彼女の手には渡らなかったのだから、ハーンだけを責められない。マイトナーもニールス・ボーアに勧められたからといって、オットー・フリッシュとだけの共著で、ハーンには相談せずに、原子核「分裂」が起こったという彼女の一世一代の分析を論文として発表したのだから、おあいこといえないことはない。

リーゼ・マイトナーと甥のオットー・フリッシュは、ある日、散歩しながら、オットー・ハーンの実験データについて討論を重ね、原子核分裂という概念に達した。このとき彼らは原子物理学の最前線、前人未到の場所にいたのであり、大発見をしたという気がしただろう。その結果をオットー・ハーンにしらせてやるべきだろうか。当時のドイツで、ユダヤ人であるマイトナーの名前を共同研究者として並べることは難しいかもしれない。マイトナーらだけで、1日も早く論文にするよりほかない、そう思うのは無理もない。

オットー・ハーンにしてみれば、実験データを送って相談したのに、その考察結果を無断で発表するとは何事か、そう思うのは、これまた無理はない。

ハーンはノーベル賞の受賞演説で共同研究者のことに言及して、喜びを分かち合うチャンスがあった。しかしユダヤ人の共同研究者のことを言うのはかれの立場を悪くすると思ったのだろう。そのチャンスをのがしてしまった。受賞演説は1度しかできないのである。

ハーンは核分裂に気づかなかった自分が許せなかったのだろう。同時にマイトナーに科学者としての嫉妬をかんじたのだろう。おかげで、彼は、科学史上、女性科学者を差別した好例として持ち出されるようになってしまった。

原爆が広島、長崎に落とされたことを知らされたドイツの科学者たち(連合軍の捕虜になっていた)のうち、ハイゼンベルグらは、ドイツも原爆を作るべきだったと言い合ったが、オットー・ハーンは、ひとり、「われわれはそれを作らないで良かった」と言った。ハーンは物理学者というより化学者であり、原爆計画があったとしても脇役だったので、そう言ったのだろうか、第一次大戦で毒ガス研究をしてこりたのだろうか。ハーンのことを考えるとき、このエピソードがたったひとつの救いのように思える。

252.無名の協力者

「グラハム・ベル 声をつなぐ世界を結ぶ」ナオミ・パサコフ著を読むと、チャールズ・ボールドウィンという名前が出てくる。

アレクサンダー・グラハム・ベルは、電話の発明者とされている。父親が視話法(一種の発音記号?)を開発し、聴覚障害者教育に携わったので、自身も一生を通じて、聴覚障害者の教育に関係を持った。電話の発明について、イライシャ・グレイやトーマス・エジソンという強敵に1歩先んじたのは、電気についての知識が乏しいにもかかわらず、(また全く不器用だったにもかかわらず)、音についての物理学や、音声についての知識が豊富であったためと書かれた本が多い。確かにそういう点もあるだろうが、この人はもっと気が多く、エジソン以上に多方面の発明に首を突っ込んでいる。飛行機の発明にも夢中になってAEA(航空実験協会)を設立した。グレン・カーチスもそのメンバーである。

ベルはヘレン・ケラーにサリヴァン女史を紹介したり、「聴覚障害の方がたのために働くことは、私にとって電話の発明よりもずっと、魂の安らぐ行為です。」と言ったりして、ヘレンケラーはそのことを記録している。ベルの伝記のその部分を読むと、彼はその一生を聴覚障害者への福祉のために捧げた、という感じがするのだが、たいていの著者はベルが、飛行機や水中翼船など聴力障害と何の関係もない発明に血道をあげていたということを、同じ章に書いてバランスを取ることを忘れている。(同じ本の別の章では他の発明のことも書いてある。)読者は十分な批判精神を働かせることなく、発明者の英雄譚に酔わせられている。ベルは複雑で、素直に英雄として、その伝説を吹聴するのは、自分が納得いくまで、文献を渉猟してからでないと、アブナイ人物なのだ。

チャールズ・ボールドウィンというひとは、ベルのAEAの第2号飛行機を作ったひとで、主翼と蝶番で接続した補助翼をつけた世界最初の飛行機を作った人物である。グラハム・ベル夫人メイベルは、飛行機の発明に関してベルの盛名が上がらなかったことを残念に思うこともあって、AEAのメンバーでひとり名をあげたカーチスを非難した手紙を残しているそうだ。彼女はその中で「カーチス複葉機と呼ばれて、空を飛んでいるのは、AEAの成果を盗んだ代物で、ボールドウィン複葉機と呼ぶべきものです。」という意味のことを言っている(前書ナオミ・パサコフ女史の本より引用いたします)。

なんのことはない。カーチスはライト兄弟のアイデアをパクってその改良版を考案しただけでなく、彼の特許の補助翼(エルロン)そのものが、AEAの他のメンバーからのパクリかもしれないのである。そうすると、発明家を英雄にしたてて、その提灯を持つという行為が、まっこと、つまらないことだという気がする。

ボールドウィンの蝶番補助翼のアイデアは、ライト兄弟のねじり主翼の改良版である可能性が高く、ライト兄弟のアイデアはカーチス由来でボールドウィンに伝わったか、ライト特許書類によるものだろう。ライト兄弟の話を聞いてきたためにAEAの中でカーチスが主導権を一時にせよ握ったことが想像できる。補助翼の発明者はカーチスということになっていて、ボールドウィンという名前は発明の歴史の中に埋もれている。一将成って万骨枯れる、である。

(ベルの母親もベル夫人も聴覚障害者である。ひとは母親を選ぶことはできないが、配偶者を選ぶことはできる。障害者と結婚することはなかなかできることではない。えらいことはえらい。しかしこれと、電話の発明の成否とは一応切り離して考えるべきだろう。ベルは大学の物理学の成果に接する機会があった。また博覧会などで、度々電話のデモンストレーションを行なう度に電話を改良した。グレイやエジソンとの間に差がついたといえば、このへんの事情によるものだろうが、よくわからない。「グラハム・ベル 孤独の克服」の中にベルの音響学の知識が決定的な役割を果たした証拠を探しているが、まだわからない。
 
 

 具体的にどういう知識あるいは経験が発明の成功にむすびついたか、それを言わないとたんなる推測にすぎない。10年にわたる特許裁判でベルはいろいろな弁明をしているが、「音の物理学の知識があったために電話の発明ができた」と言っているのが、ベル自身であって、裁判で証言しているのであれば、話半分くらいに聞いていたほうがいいだろう。)